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フヒねむのブログ

ねむくて仕方がない日々の記録を残せたらいいな、と思っています

【漫画感想】「空挺ドラゴンズ」 2巻

空挺ドラゴンズ(2) (アフタヌーンKC)

空を旅する捕龍船『クィン・ザザ号』は、有数の港町・クオーン市に到着。乗組員たちは船を降り、久々の地上を満喫している。そんな折、港に停泊中の船に捕らえられていた1匹の龍が突如暴れ出した! 乗組員は総力をあげて捕獲に挑むが、龍は巨大でかなり手強い――。一行は龍を捕まえ、食べることができるのか!? マンガ大賞2017ノミネート作品。空飛ぶグルメ紀行はますます絶好調!!

Amazon内容紹介より

ここ最近始まった漫画の中では続きを心待ちにしている上位の漫画と言っても良いと思います。1巻の時点でファンタジーの王道をしっかりと歩んで行ってくれそうな期待感がありましたけれども、2巻でもその期待を裏切らずにしっかりと歩んでくれているように感じます。2巻の感じですと、メインキャラクターたちを数話ずつピックアップしていく展開のようですので、まだまだ長く楽しめそう気がしますね。5巻くらい続けばアニメ化しそうな予感もしたりしなかったり…。


さて「空挺ドラゴンズ」2巻です。個人的には2巻でグルメ部分の占める割合がそれほど大きくならなかったことがとても良かったなと感じました。上記、Amazon内容紹介などの通り「グルメ紀行」という部分をウリにしているところもあるようですけれども、自分としては「捕った龍を食らう」という部分は描きつつも「グルメ」にはなって欲しくないな、と思っています。もちろん生き物を狩る以上、その肉を食べる行為自体を描くのは当然のことではあると思いますが。そういう意味では今回出てきた、龍の革を使ったタペストリー作りなどの文化的な側面の描写はとても良かったと思います。今後、龍の油を精油するところや骨を加工するところなども描かれていくと面白いなあ、とか想像しました。3巻以降も「ミカさん」にはぜひぜひブレずに喰い続けて欲しいですけれどもね。


それにしても長期間の空の旅に必要な職業はたくさんあるでしょうから、それに伴ってキャラクターも当然ではありますが、様々なタイプが登場してくれそうです。航海士*1や機関士や料理人を始めとして、今回名前付きで登場した中では、会計のような仕事をしている「リーさん」がなかなかいい味を出していたように思います。基本的には荒くれ者たちで構成されているクィン・ザザ号のクルーの中では圧倒的に知的そうなナマズ髭メガネ顔で、まさに会計にうってつけな容貌です。ただ、今回のメインキャラクターと言えるだろう「ジロー君」は少しわかり易いキャラクターすぎたような気がしますね。もう少し影があって欲しかったところですが…2巻でのエピソードも、特に引きずる雰囲気はありませんでしたしね。ピュアと言うよりは能天気なキャラクターだったのかもしれませんけれども。

これは1巻の感想にも書きましたけれども「ハックス」と同じく、わりとアッサリ風味でお話が展開していく予感がするので、人の生死に関してはもう少し重い空気を感じさせて欲しいかな、と思ったり。捕龍船の生活だと人の生死が身近すぎる、ということもあっての描写なのかもしれませんけれども、街の人々も含めてやはり若干「怒哀」の感情に乏しく感じてしまったのですよね。ドロドロ、とまではしなくても良いですけれども、もう少し重厚感が欲しいです。


ところで2巻の帯には「超巨大龍、襲来」と書かれていましたが、細かいところではありますけれども襲来はしていないですよね…。大々的に襲われてしまってはいますけれども。ちなみに襲われ方は、襲う側の動物を変更すれば現実世界でも起こりそうな感じがありました。その龍を仕留める時に長老のもっともらしいセリフに被せて「ミカさん」が食えるかどうか、というところに重点を置いているのはとても良かったですね。今後も説教臭くならない方向で展開して欲しいな、と思います。


そんな訳で「空挺ドラゴンズ」2巻は、引き続き3巻が待ち遠しく、また楽しみになるような内容でした。もう少し重い空気感をまとっても良いのかな、と個人的には思います。特に人物描写に関しては、もう少し面倒臭そうなキャラクターも登場して欲しいところですね。何はともあれ3巻が楽しみです。

*1:航空士?

【読書感想】「アイヌ学入門」

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

アイヌと聞くと、北海道の大自然の中で自然と共生し、太古以来の平和でエコロジカルな生活を送っていた民族というのが一般的なイメージでしょう。
しかし、これは歴史的事実を無視した全くの誤解に過ぎません。例えば中国が元の王朝だった時代、元朝は現在の沿海州地方に出兵し、その地でアイヌと戦争をしました。鷲羽やラッコの毛皮など、当時珍重されていた品々を調達するために北海道、樺太から沿海州にまで進出してきたアイヌの人々を排除するためでした。この事例からも窺えるように、中世のアイヌは大交易民族でした。奥州藤原氏が建立した中尊寺金色堂の金もアイヌがもたらしたものだった可能性があるのです。
著者によれば、アイヌは縄文の伝統を色濃く残す民族です。本州では弥生文化が定着したあとにも従来の縄文の伝統を守り、弥生に同化しなかった人々、それがアイヌだったのです。有名な熊祭りも、縄文の伝統を今に引き継いだものではないかと考えられています。
また、日本との交流も従来考えられていたよりもずっと緊密でした。アイヌ語で神を意味する「カムイ」が日本語からの借用語であることは有名ですが、それだけに止まらず、様々な面において日本由来の文物を自身の文化に取り入れていったのです。
本書では、従来のステレオタイプのアイヌ像を覆し、ダイナミックに外の世界と繋がった「海のノマド」としてのアイヌの姿を様々なトピックから提示します。

Amazon内容紹介より

2015年の発刊当時から読みたいな、と思っていたのですが、思ったままに2年間も読まずに過ごしてしまいました。「ゴールデンカムイ」の新巻を読むたびに読みたい読みたい、と思い出してはいたのですが、結局ここまで読まずにいたことを読み終わってから改めて後悔してしまいましたね。本当にもっと早く読むべき本でした。読んでいれば「ゴールデンカムイ」を読むのももっと面白く読めたかもしれませんから…。


さて「アイヌ学入門」です。そもそもアイヌのことをほとんど知らないでここまで生きてきているので、入門と称されている本が新書で読めるのはとてもありがたいです。自分より下の世代の学校教育においてアイヌについての学習がどういう扱いになっているのかは知りませんけれども、少なくとも自分はほとんど学んだ記憶がありません。いくつかの読んだ本に少しばかりの記述があったり、新聞記事から気になったものを少し調べてみる、程度のことでしか得た知識はない、といっても良いと思います。それでも実家には木彫りの熊があったり、アイヌの面があったりしたので、どこかしらで親しみのある文化としては接していたようです。ちなみに本書は「序章 アイヌとはどのような人々か、第1章 縄文-一万年の伝統を継ぐ、第2章 交易-沈黙交易とエスニシティ、第3章 伝説-古代ローマからアイヌへ、第4章 呪術-行進する人々と陰陽道、第5章 疫病-アイヌの疱瘡神と蘇民将来、第6章 祭祀-狩猟民と山の神の農耕儀礼、第7章 黄金-アイヌは黄金の民だったのか、第8章 現代-アイヌとして生きる」の各章で構成されています。個人的には特に序,1,2,4,6章が面白かったですね。半分以上の章を挙げてしまっていますけど…。本書のような捻りはなくても、誠実なタイトルを掲げた新書ばかりだと読者としては嬉しいですね。


本書を読んでいて、Amazonの内容紹介にもある日本における元寇とほぼ同時期にアイヌが元に攻められた、という史実を初めて知りました。聞いたことがあったような気もしなくはないですけれども確信が持てないので初めて知ったと言って良いでしょう。元の侵攻の程度も元寇と比べると小さそうではありますが、それでも当時のアイヌの人口規模を考えるとかなりの大きさのものだったようで、最終的には服属することにはなったようですけれども、その時代のアイヌが外交的に孤立していた訳ではなくて、当時の諸勢力としのぎを削って勢力を保っていた様は本書でも指摘されているように、自分のアイヌに対する感覚からは違ったところにあったのでとても驚きました。

また特に東北地方におけるアイヌ勢力の盛衰に関してはかなり興味深く読みました。アイヌと古代日本とその古代日本の中央から蝦夷と呼ばれていた勢力、そして北海道より更に北にいたオホーツク人それぞれの勢力圏の移動はとてもダイナミックで想像しただけでも興奮してきます。また言語的な独自性、完全に孤立した状態ではなくヴァイキング的な存在としての広範に渡る貿易圏、それと対をなすような沈黙交易という習俗、そのどれもが絶妙なバランスの上で成り立っていたように感じられました。


ところで第3章の「伝説-古代ローマからアイヌへ」にはロマンは感じました。少し「イリヤッド」という漫画を思い出しましたね*1。ただ北東アジア圏を中心としたアジアでの交流は頻繁に行っていた、というのは納得ですし、古代ローマからアイヌ・日本までの道というのは想像するだけでわくわくしますけれども、他の部分の慎重さに比べると一足飛びすぎるように思えてしまいました。もちろん、東アジア圏での貿易を行った結果、西から少しずつ流れてきた文化の影響を受けている、というのはあるでしょうけれどもね。


そんな訳で「アイヌ学入門」はもっと早く読めば!と思うような読書になりました。この内容で「入門」な訳ですから、そのうちのほとんどを知らなかった自分は、どれだけアイヌのことを知らなかったのか、ということですよね。著者による類書もいくつかあるようですので、そちらも続けて読もうと思います。「ゴールデンカムイ」もこういうことを消化した上で描かれている漫画なのだなあ、と考えるとより楽しめそうですので、また1巻から再読してしまいそうですね。

*1:漫画を連想することの多さよ…

【読書感想】「男と点と線」

男と点と線 (新潮文庫)

妻の離婚資金でクアラルンプールに暮す老夫婦、男友達と卒業旅行でパリへ行く女子大生、上海出張に戸惑う32歳の会社員、東京で水族館デートをする高校生カップル、幼馴染にNYに誘われた42歳の独身男、彼氏にドタキャンされた友人と世界最南端の町へ行く28歳の小説家―この瞬間にも男と女は出会い繋がっていく。ささやかな日常の中で、愛と友情を再発見する6つの軽やかな物語。

Amazon内容紹介より

これまた山崎ナオコーラ氏の文庫です。時期的には「「『ジューシー』ってなんですか?」」の一作前にあたる作品のようですね。内容がどうこう、という話以前に著者の文章自体が好みですし、短編が多いのでサクサクと読み続けてしまいます。このまま断続的に全作読み続けてしまいそうな予感がしますね。


さて「男と点と線」です。本書は「慧眼」「スカートのすそをふんで歩く女」「邂逅」「膨張する話」「男と点と線」「物語の完結」の6つの物語で構成されています。上記の「Amazon内容紹介」でもわかる通り、それぞれの物語は世界各地で色々な組み合わせの人たちによるお話です*1。そこには「ささやかな日常」とも書かれてはいましたが、個人的には舞台が「ささやかな日常」だったとは思いません。かなり特別な舞台ではあったと思います。ただし登場する人々は決して特別な人たちではなく、ささやかな日常を愛するような人々であったな、とは思いますね。それは著者のどの作品にも通じる要素であるように思いますし、それが自分が著者の作品を好んで読む理由かもしれません。


個人的に一番印象深かったお話は「邂逅」でした。舞台が不思議で怪しい雰囲気のある上海であることや、夢か現かわからないような存在の少年やそのお姉さんや駱駝が出てきたりするせいか「事件記者トトコ」や「ストレニュアス・ライフ」を連想してしまいました。どちらもとても好きな漫画ですけれども、連想するまで近い内容の話かというとそういう訳でもないので、自分でも連想した理由はよくわからないのですが、少し現実的な部分と虚構の入り乱れたところがある様子が魅力的なのは共通しているように思います。ちなみにお話の冒頭に出てくるサワタニさんが、その後どこかに出てくるに違いないと思いながら読み続けた結果、二度と現れなかったことにはガッカリしてしまいましたけれども…*2。印象の強さは他のお話とのギャップがかなり大きかった点も関係したかもしれませんね。一番印象に残ったお話が一番好きなお話と同じでなかった点が残念な点でもありましたし、それがこの6つの物語を通しての印象となってしまった気がしてなりません。


また、その後に続く「膨張する話」は弓削田君の物言いが苦手であったことと*3、海藤さんも何だか少し面倒臭そうな雰囲気のある印象だったので、お話自体にあまり乗れませんでした。高校生の頃ってこんな感じでしたかね…もう遠くになりすぎてしまったのか思い出せません。ただ弓道の袴姿をしている女性がとても魅力的なのはよくわかります。特に打ち起こしから大三にかけての流れがキレイな人は飽きることなく見続けられる、と今でも思いますね。


ところで表題作である「男と点と線」に関しては、何というかキレイな着地すぎる気がしました。映像で見ていれば、とても感動しそうな展開と結末ではありましたが、文章で読んでいると少しストレートすぎるかなあ、と思ってしまいましたね。個人的にはもう少し捻った関係性に変化してくれた方が面白かったのかな、と思えてしまいました。その点「慧眼」は登場する夫婦の何とも言えない間とテンポに引き込まれるものがあったように感じます。そういった間とテンポを作りあげることが出来なかった結果として「男と点と線」の男女はあの関係性に着地した、とも言えるのかもしれませんけれどもね。


そんな訳で「男と点と線」は落ち着いていて、どれもサクサクと読むことの出来きる物語であり、その文章は相変わらず好みではありました。ただ若干パンチが弱いというか、あまりにもサラッとした読み応えではあったのでもう少し重厚感とういうか考え込むようなポイントも欲しかったかな、と思う部分はありましたね。ともあれ、著者の他作品は機会を見付けて積極的に読み続けてみようと思います。

*1:こう書いてしまうと、とてもてきとーな説明に聞こえますけれども…

*2:サワタニさんの描写自身に魅力を感じた訳ではなくて、単に再び現れるという予感が外れたため

*3:高校時代に似た雰囲気で会話をする男性の知人がいましたが、本当に苦手でしたね。「嫌い」というのとは少し違いますが…